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パリの風景をファンタジックにとらえた「誰も見たことのないもうひとつのパリ」、まるで絵画のような印象の「静物」に続く、田所美惠子の3回目の針穴写真展を開催いたします。今回のテーマは樋口一葉の作品世界、明治の女流作家・樋口一葉の作品に描かれている建物や部屋の内部などをピンホールカメラで撮影。それも実物をではなく、檜細工師の三浦宏氏が一葉の物語の行間を読み、細部にまでこだわって再現したミニチュア作品(縮尺20分の1や10分の1)を撮影したものです。ミニチュアの中には入ることはできませんが、ピンホールカメラで撮影された作品はまるでその場所に立っているかのような錯覚を起こさせます。会場には写真作品40点と併せて、三浦宏氏のオリジナル作品3点も展示します。樋口一葉の文学の世界の色彩や温かみを感じさせる、針穴写真ならではの表現をお楽しみいただきます。

                                                                        ポーラ ミュージアム アネックス


「針穴写真にしかできないこと」を探究している私は、縮小世界に早くから着目してきました。4年前に発表したミニチュアパークの作品は1995年に撮り始めたものです。昨年、檜細工師 三浦宏氏の作品に出合い、私は再び縮小世界に取り組むことになりました。今回は三浦氏の特別な計らいで、建物の内部にまで入れていただいて撮り下ろしました。一葉の小説の舞台と、もはや失われてしまった明治の時間と空間を、匠の技と豊かな想像力で蘇らせた三浦氏の小宇宙。それは、縮尺20分の一の精巧な造作だけでなく、そこに宿る光と影、そして一葉の人生や明治の女たちの息遣いまでも内包しています。そのような世界を等身大に映し出すには、針穴写真のパンフォーカスと自作の缶カメラが不可欠でした。三次元の縮小のアートと二次元の縮小のアートで訪れた一葉の世界を、会場でお楽しみいただければ幸いです。

                                                                                                   田所美惠子
田所美惠子針穴写真展
一葉に会いたくて
檜細工 三浦宏が造った物語
ポーラミュージアムアネックス 一葉に会いたくて チラシ
2007年5月2日(水)〜5月29日(火)
ポーラ ミュージアムアネックス 銀座
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY